安全管理に関係した唯一の国家資格です。
その他にも労働安全衛生法で規定された”免許”がありますが、これは、それぞれの独占業務に特化したもので全体的な安全管理の資格ではありません。もちろん、知識を持ってされている方もたくさんいると思います。
業務独占も名称独占もありませんが、それぞれの専門分野の安全をベースに産業安全全体に関しての知識を持っていることの証明になります。
衛生は医療とのかかわりも多いため、ほかにも専門の資格があります。
安全は、実は、誰でもできる仕事です。
実際に安全に関する業務で施工会社の方と話をすると資格そのものを知らない方もかなりいらっしゃって、名刺に記載すると「何ですか?この資格は。」と言われるくらいです。知名度がないのが非常に残念です。
誰でもできる仕事であるがゆえに専門性が非常に見えにくい分野とも言えます。単純に法律の知識だけでは、取得できませんし、実際に業務をすることはできません。法律だけの話でいえば、弁護士や社労士の方が上かもしれません。
受験資格を見ると理解できると思いますが、5つの専門がある中でそれぞれの業務できちんと実践を積んでいることが条件になっていて、それがゆえに受験者の年齢層は、結構高めです。土木、建築の場合は、施工会社で安全管理を担っている方が多く受けられていますが、私のように設計事務所がベースの方は少数派です。公的機関の方の監督員の方が合格されている話も伺ったので、安全管理の知識があれば、合格できると思います。ぜひ挑戦してみてください。
試験内容
試験は、学科試験(1次)と口述試験(2次)があります。
学科試験(1次)
専門が電気、機械、化学、土木、建築の5つあり、共通の科目として「産業安全一般」「産業安全関係法令」の2科目とそれぞれの専門の安全の1科目で合計3科目の試験があります。
受験資格によっては、科目の免除が受けられます。
産業安全一般
安全の基礎的な知識、全産業の安全に関する知識、
安全管理手法、災害分析手法など
択一式
2時間
産業安全関係法令
労働安全衛生法を中心に関連した法令
択一式
1時間
各専門の安全
専門に特化した安全に関する知識
記述式
2時間
口述試験(2次)
筆記試験(1次)の合格発表から約1か月後に口述試験(2次)があります。
持ち込める資料は無く、3人の面接官からの質問に15分間回答します。
受験資格
受験資格は、主だったところは以下の通りです。
1.ほかの国家資格
2.実務経験年数(+学歴)
3.実務経験年数+講習受講
受験の際には、安全衛生技術協会のホームページや試験要綱で確認しましょう。
国家資格は、
1)技術士2次試験合格者
2)第一種電気主任技術者
3)1級土木施工管理技士
4)1級建築施工管理技士
5)一級建築士(令和2年12月15日以後は、試験合格のみで可)
6)技能検定(1級又は単1級)
(金属溶解、鋳造、鍛造、金属熱処理、粉末冶金、機械加工、放電加工、金型製作、金属プレス加工、鉄工、建築板金、工場板金、アルミニウム陽極酸化処理、溶射、金属ばね製造、仕上げ、切削工具研削、機械検査、ダイカスト、機械保全、電子回路接続、電子機器組立て、電気機器組立て、半導体製品製造、プリント配線板製造、産業車両整備、内燃機関組立て、空気圧装置組立て、油圧装置調整、建設機械整備、農業機械整備、機械木工、プラスチック成形、強化プラスチック成形(筆記試験において積層成形法を試験科目として選択していた者に限る。)、建築大工、とび、左官、ブロック建築、配管、型枠施工、鉄筋施工、コンクリート圧送施工、ウェルポイント施工、化学分析、金属材料試験、産業洗浄)
理科系等の大学卒業後+実務経験5年
理科系等の短期大学、高等専門学校卒業後+実務経験7年
理科系等の高等学校卒業後+実務経験10年
実務経験15年+講習受講
対象の講習は、中央労働災害防止協会(中災防)の行う安全管理講座と前期・後期を共に受講、平成21年9月30日までに労働安全衛生研究所の開催した労働安全衛生大学講座(理科系等の講座で特別の資格証明書の発行を受けたもの)。
この他に中災防で安全管理士や労働基準監督官の経験者など、24の受験資格が認められているので、安全衛生技術試験協会のページで確認しましょう。
この受験資格を見ると経験が必要な場合が非常に多いことがわかります。最も早く受験できても20代後半です。実際に試験会場に行くと、人生の先輩方が多く、若いうちに取得しようという方は少数派なのかもしれません。私も数回チャレンジしましたが、最初は、30代後半でした。
試験科目の免除
労働安全コンサルタント試験では、共通と専門の科目がありますが、受験資格によってそれぞれの免除されています。
私の場合は、建築施工管理技士と建築士を取得していましたが、このために申し込みでは施工管理技士を記載しました。
機械安全
技術士(機械、船舶・海洋、航空・宇宙、金属)、
中央産業安全専門官又は独立行政法人労働者健康安全機構で機械安全を専門にしていた方
電気安全
技術士(電気電子)、第1種電気主任技術者、
中央産業安全専門官又は独立行政法人労働者健康安全機構で電気安全を専門にしていた方
化学安全
技術士(化学、農業・食品を選択科目とする農業)、
中央産業安全専門官又は独立行政法人労働者健康安全機構で化学安全を専門にしていた方
土木安全
技術士(資源工学、建設、農業・農村を選択科目とする農業、森林土木を選択科目とする森林)、
一級土木施工管理技士、
中央産業安全専門官又は独立行政法人労働者健康安全機構で土木安全を専門にしていた方
建築安全
一級建築施工管理技士、
中央産業安全専門官又は独立行政法人労働者健康安全機構で土木安全を専門にしていた方
産業安全
一般
技術士(生産・物流マネジメントを選択科目とする経営工学)、
安全管理士又は産業安全専門官として7年以上その職務に従事した方、
労働基準監督官として10年以上その職務に従事した方
安全関係
法令
産業安全専門官として7年以上、労働基準監督官として10年以上その職務に従事した方
二次試験(口述試験)の免除はありません。
試験会場
1次試験∶
各地の安全衛生技術試験センターで関東だけ東京都内の試験会場
2次試験∶
東京、大阪の2か所
試験日程
6月下旬に申込用紙の配布開始
7月上旬から8月上旬まで申し込み受付
10月中旬の平日∶1次試験
12月中旬から下旬∶1次試験の結果発表
1月下旬∶2次試験
3月下旬∶結果発表
合格後の手続き
登録料は1分野あたり、2万円です。
例えば、建築で労働安全コンサルタントに合格して、衛生工学で労働衛生コンサルタントにも合格した場合、それぞれに2万円なので合計4万円必要になります。
合格後にすぐに登録する必要はなく、何年後でも手続きを行うことも可能です。
登録しない場合、特に問題はありませんが、日本労働安全衛生コンサルタント会に入会できません。
登録することで、協会経由の依頼を受注することができます。ただし、私のように兼業、副業の場合は、各都道府県支部の名簿に登録できないケースがあります。
しかしながら、本部の名簿は公表されてるため、少し費用はかかりますが、登録のメリットが全く無いわけではありません。
登録手続きでは事務所名も登録します。有料ではありますが変更も可能です。
受験対策
他の資格試験と同じように受験サービスを何社かが提供していて、それを利用する方法があります。
テキストもそれらの会社が販売しているので購入することができます。
試験の最大の問題は、産業安全一般と安全関係法令は、範囲が広すぎることです。本気ですべてを覚えたい方を止めませんが恐らく無理だと思います。
日頃から法令に触れている方は、ゆっくり重要な条文や通達類を覚えていける環境がありますが、普通は、自分の専門に関連したものだけになります。そのうち取れるだろうというスタンスであれば、何年もかけて色々な産業の仕事の特徴と法令を覚えていけば良いと思いますが、なかなか、そこまで悠長なことを言っていられません。毎年約2万5千円も出すのはもったいないです。そこでよくまとまったテキストを購入して、様々な産業の安全に関する問題と法令を覚えることをお勧めします。
私は産業安全一般は、割りと興味を持って見ることができたため、初受験から基準は軽く越えられましたが、法令で毎回、残念な年末を迎えていました。産業安全一般よりも、問題数が少ないのに学科として必要な点数は同じなので、1問あたりの重みが違います。その上、範囲が広い。絞れないのでテキスト様々でした。
2次試験は、口述試験ですが想定問答を作成することがオーソドックスな対応です。私の場合は、100個くらいの問答を考えて挑みました。作成した後に覚えようと考えていましたが、作成に苦労をしたので、出来上がったときには頭にしっかり入っていました。
合格率は、最終的に30%程度ですが、1次試験で30~40%通過して、2次試験だけでは90%以上が合格します。なので、1次試験が通ったら、ひと安心です。とはいえ、5%~10%は、不合格ですから、準備はしましょう。
1月に日本労働安全衛生コンサルタント会が2次試験対策講習を開催しているので利用するのもお勧めです。