工事をする際に行うアスベストの事前調査は、2023年10月1日から、有資格者が行う必要があります。
この対象の資格の一つが建築物石綿含有建材調査者です。
公的資格です。法律で定められた国家資格とは異なりますが、官庁や大臣が認定する資格です。
すべての区分で試験はありますが、きちんと講習を聞いていれば判る試験です。規制を厳しくした影響で多くの資格者が必要になってくることから、落とすことが目的の試験ではないようです。
なお、建物所有者が維持管理などを目的に自主的に行う調査は、有資格者でなくても構いませんが、今回の改正によって分析調査を行っている会社の方も取得者は多くなっているので、調査を依頼すると恐らく有資格者が対応してくれます。
受講資格
講習を受けるに当たっては、受講資格が定められています。特定、一般、戸建てのすべてで同じです。
1) | 大学の建築の課程を卒業後、建築に関する2年以上の実務経験 |
2) | 短期大学(修業年限が3年)の建築の課程またはこれに相当する課程を卒業後、建築に関する3年以上の実務経験 |
3) | 短期大学または高等専門学校の建築に関する課程又はこれに相当する課程を卒業後、建築に関する4年以上の実務経験 |
4) | 高等学校の建築に関する課程またはこれに相当する課程を卒業後、建築に関する7年以上の実務経験 |
5) | 学歴に関係なく、建築に関する11年以上の実務経験 |
6) | 建築行政または環境行政(石綿の飛散の防止に関するものに限る。)の2年以上の経験 |
7) | 特定化学物質等作業主任者技能講習を修了後、石綿含有建材に関する調査に関する5年以上の実務経験 |
8) | 石綿作業主任者技能講習を修了 |
9) | 産業安全専門官もしくは労働衛生専門官の経験 |
10) | 労働基準監督官として2年以上の経験 |
11) | 作業環境測定士で石綿含有建材に関する調査に関する5年以上の実務経験 |
講習内容
一般建築物石綿含有建材調査者
講習は2日間あり、試験が3日目にありますが、講習機関によっては、試験を2日目の最後に行っているので、時間の取れない方は、そういった機関をお勧めします。
1) | 建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1、2 |
2) | 石綿含有建材の建築図面調査 |
3) | 現地調査の実際と留意点 |
4) | 建築物石綿含有建材調査報告書の作成 |
戸建て建築物石綿含有建材調査者
講習は1日で終了し、その後、試験もありますが、1日で終了させる機関が多いようです。
1) | 建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1、2 |
2) | 一戸建て住宅等における石綿含有建材の調査 |
3) | 現地調査の実際と留意点 |
4) | 建築物石綿含有建材調査報告書の作成 |
建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1は、石綿作業主任者は免除となっていますが、この範囲も試験問題の対象なので、受講することをお勧めします。
特定建築物石綿含有建材調査者
一般建築物石綿含有建材調査者と講習は同じです。それに加えて、実地研修と修了考査を行います。
試験 | 内容 |
口述試験 | 面接形式で受講者の調査票の説明能力、調査票に関する多分野の理解、調査者としての適性、石綿に関する多分野での総合的理解を評価する。 約20分 |
筆記試験 | 一般建築物石綿含有建材調査者と同じ内容の試験 1時間 |
調査票試験 | 前提条件が与えられた架空の建物について、複数の写真を参考とし、石綿含有建材調査者として必要とされる知識を総合的な判断材料として、石綿含有建材と非石綿含有建材を区別する能力を評価する。なお、判別する対象とされる石綿含有建材は、吹付け材および保温材・断熱材に分類されるもの(レベル1、2)を対象とする。調査を実施する際に的確に石綿建材を見極め、過不足のないレポートを作成する。 1時間 |
受講料
受講料は講習機関によっては異なりますが、概ね以下の通りです。
一般∶4万円~5万5千円
戸建て∶3万円~3万5千円
特定∶実地研修と修了考査で4万4千円、講習とあわせて9万9千円。
講習機関
法改正により資格者の需要が、一気に増えたこともあり、実施している機関は増えています。インターネット検索で探すか、石綿総合情報ポータルサイトに掲載されている機関に申し込んでください。
講習会場・日程
講習の実施機関が非常に多くあるため、会場も日程もかなり多くあります。
しかしながら、受講希望者が大量にいるため、わりと早く満席になりますので少し余裕をもって申し込みをしましょう。
戸建てと一般と特定の違い
戸建ては、文字通り戸建住宅とマンションの住戸内の調査を主に対象にしています。規模が小さく使用されている材料の種類も量も比較的少ないので別のカテゴリーになっています。同じマンションでも、バルコニーや外壁、共用廊下、エレベーターシャフトなどの共用部は、一般または特定の資格が必要です
現在は、一般と特定とには、扱いの違いはありません。しかしながら、特定の講習では実技が有り、より実戦の経験が必要であるため、将来的には何らかの違いが出てくる可能性はあります。
講習の内容、受講料を考えると差がないのは不公平なように思えますが、今後、扱いの違いが出てきたときに難易度が上がることも考えられるため、今のうちに取得してしまうのも、良い選択です。実務の学習することで、より多くの知識を身につけることにも価値はありますので、機会がある方は挑戦してください。
使用するテキスト
使用するテキストは、会場で配布されますが、厚生労働省のホームページでもダウンロードできるため、試験が不安という方は、事前に内容を予習して講習に臨みましょう。