工場や現場では、同じ会社でも複数の人が集まって仕事をしています。一人でも安全衛生の問題は発生しますが、複数で仕事をすると残念ながらリスクが増えてしまいます。それは、個人の行動が直接個人に返るのではなく他の人に影響してしまうリスクが足されるため、必然的に増えてしまいます。
働く人の安全衛生を確保するのは、事業主(会社)です。ただ、複数の現場や工場でも複数の工程を実施している場合、社長が、すべて指導するわけにはいきません。そこで、その役割を果たすのは、職長です。会社によっては、班長やリーダーなどの呼び方をしているかもしれませんが、作業をする人をまとめる役の社員を決めて、その方に指導をしてもらっています。
チームをまとめて、指導をして、となると入って間もない人などの経験の浅い人には、荷が重いため、入職後ある程度の経験を積んだ人の適性を見て任命します。そして、労働安全衛生法第60条で新たに職長になる人に対して教育を行うことが求められています。もともと後輩を指導することが、上手な人もいると思いますが、改めて以下の項目について教育を行います。
- 作業方法の決定、労働者の配置
- 労働者に対する指導又は監督の方法に関すること
- その他安全衛生に関すること
この指導は、中央労働災害防止協会や建設業労働災害防止協会などで講習も実施していますが、会社で実施しても構いません。その際に指導のノウハウを持った人に講師を充てる必要がありますが、なかなか、教えるのは難しいものです。そこで、RST(労働省方式現場監督者安全衛生教育トレーナー)の講習を中央労働災害防止協会が開いています。
受講資格
この講習は、受講資格は特に設けられていません。
受講者は、すでに安全衛生が専門という方ばかりではありませんが、ある程度の安全衛生に関する業務経験を持った人が参加しています。全く経験がないと講習を修了しても、リスクアセスメントやグループ討議などを取り入れて教育をする必要があるため、実際の指導は難しく、会社にとって講習を受けさせるメリットは殆ど無くなってしまいます。
講習を受けた後から教育担当しながら、経験を積んでいくことも可能ではありますが、質問に答えられなかったりして講師として非常に辛い状態にもなるのでお勧めはできません。
講習内容
講習は、5日間行われますが、なかなか、5日間も連続で会社を開けることが難しい人のために、分割コース(前期3日間、後期2日間)なども用意されています。
一般コースと建設コースがありますが、一般は、主に製造業向けで、建設コースは、文字通り建設業向けです。安全衛生等の基本的な考え方は、業種を問わず同じですが、建設業で発生する安全衛生管理の特徴(統括管理体制等)は、労働安全衛生法でも少し異なるため、建設業の会社で指導を行う方は、建設コースを受講しましょう。建設業の職長は、多くの場合、安全衛生責任者になっていて、その役割に関する教育の知識が、一般コースとは異なります。
- トレーナー及び職長の役割、職長教育の進め方
- 作業手順の進め方
- 作業方法の改善
- 労働者の適正な配置の方法
- 指導及び教育の方法
- 作業中における監督及び指示の方法
- 作業設備の安全化
- 環境改善の方法と環境条件の保持
- 安全又は衛生のための点検の方法
- 異常時における措置
- 災害発生時における措置
- 労働災害防止についての関心の保持
- 労働災害防止についての労働者の創意工夫を引き出す方法
- 危険性又は有害性等の調査の方法
- 危険性又は有害性等の調査の結果に基づき講ずる措置
- 教材及び指導案の作成、役割演技
- 災害事例研究
- 安全衛生責任者の職務と統括安全衛生管理の進め方(建設コースのみ実施)
- 安全衛生の動向(法令、総合的な安全衛生管理等・一般コースのみで実施)
- その他職長教育講師として必要な項目
一般コースを受講した方が建設業で講師をする場合は、「安全衛生責任者教育講師養成講座」が用意されているため、受講してから指導を行って下さい。
いずれのコースもかなり、盛りだくさんの内容になっていますが、自分自身が安全衛生管理や指導を直接行うのではなく、やってくれる人を育てるための知識を得るための講習ですので、最低限このくらいは必要になります。
期間中は原則研修所に寝泊まりします。朝は、体操を行い、その後、講習を受けます。そして、講習が終わった後には、演習で使用する指導案を作ります。
講習会場
講習は、東京と大阪の2か所で行われています。
東京は、「東京安全衛生教育センター」
〒204-0024 東京都清瀬市梅園1-4-6
大阪は、「大阪安全衛生教育センター」
〒586-0052 大阪府河内長野市河合寺423-6
私は、東京でしたが、西日本からも来ている方がいらっしゃいましたので、受けられる講習の日程で決めても良いと思います。
講習日程
講習は、ほぼ毎週行われていますが、現在は、定員が20名となっているため、希望する時期や日程がある場合は、早めに申し込みをしましょう。
受講料
¥123,200ー
テキスト代と宿泊費、消費税は含まれていますが、食事は別です。センターで申し込みをして食堂で食事をします。
何ができるか
RST講習修了者は一般、建設のそれぞれに対応した業種で、新任職長安全衛生教育の講師をすることができますが、そのほかにRSTを取得すると安全衛生推進者養成講習(登録安全衛生推進者等養成講習機関が実施)で、安全管理、危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講じる措置等(危険性又は有害性の調査の科目を修了した者に限る)、安全衛生教育、安全衛生関係法令の講習科目の講師として担当できます。